(1) 法話とは
* 浄土真宗の伝道は「仏徳讃嘆」「自信教人信」という言葉につくされます
浄土真宗では、法話を聴聞することが大事にされてきました。
法話とは、阿弥陀如来の救いの法を讃嘆することです。
お聴聞の方々と、ともに聞き喜ぶためにも、浄土真宗の深い内容が、よりわかりやすく、より親しみやすく聴聞できるように、法話をするさいには、さまざまな工夫や配慮が必要です。
ここに法話の構成や、作成にあたっての基礎を示し、讃題の例、譬喩(たとえ話)・因縁(事例)などの題材などを用意しました。
ご活用ください。
(2) テーマを決める
* 一座の法話のテーマを決めます
わずか10分の短い法話でも、前後2席の法話でも、その法話で讃嘆するテーマを明確にします。
連続して数日続く法座などでは、全体のテーマを決め、各々の法話の順序とテーマを決めましょう。
講題を提示する必要がない場合でも、その法話で讃嘆する内容を一言で言い表せるほどにテーマを絞りましょう。
(3) 讃題を決める
* 法話は仏徳讃嘆です
その法話のテーマの拠りどころとなるお聖教聖典のご文を選びます。
(4) 法話の構成
* 法話の構成の基本は以下のようなものです
なお、法座、年忌法要、お通夜や葬儀など、それぞれの場面によって工夫や配慮が必要です。
讃題
法話の中心は、仏徳讃嘆にあります。その讃嘆する内容の主題にあたる部分を「讃題」といいます。
讃題は、原則として聖典から選びますが、どのご文を讃題にするのかによって、法話の内容が必然的に決まってくるともいえます。
長すぎたり、短すぎたりしないように、また聴聞の方にも親しまれているご文を選ぶといいでしょう。
【ポイント】
讃題のご文のどこに焦点を絞るかを考え、テーマを設定します。
【注意点】
「悲歎述懐」や「誡疑讃」などは、讃題として拝読することを遠慮してきた慣習もあります。
序説
讃題に続く法話の導入部分です。
ご法縁の意義の説明、テーマ設定の意図を紹介します。
問いかけや問題提起をしましょう。
【ポイント】
本説に導入し、結論を明らかに伝えるためには、初めに「この度の法話は何をテーマにしているか」を明らかにすることが大切です。
聞き手との接点となる、身近な話題や事柄を序論に使うとよいでしょう。
聴聞の方に問いを投げかけて、本説に導入するための問題提起をすることも一つの方法です。
【注意点】
挨拶や自己紹介には時間をとりすぎないように注意しましょう。
本説
法話の中心です。
法義説(承)では、讃題に関連するご文を上げて、讃題の文意を解釈しながら、明らかに示します。
譬喩・因縁(転)では、讃歎しようとするテーマに則して、譬喩(たとえ話)や因縁(事例)などを用いて、わかりやすく親しみやすく話します。
【ポイント】
わかりやすく親しみやすい譬喩(たとえ話)や因縁(事例)を用いながら、聖典のご文の内容をさまざまな角度・方向から深めていくことができるとよいでしょう。
例話は、本説において讃題のご文の意味を説明したり、味わいを深めるために、わかりやすく親しみやすいものをもちいるとよいでしょう。
例話の材料は経典にも多く説かれているので、それを用いることもよいでしょう。
例話の紹介のページへ
書物や人の話から引用するときは、引用であることを正確に示しましょう。
より具体的に身近に表現するように配慮すると、興味を持って聞いていただけるでしょう。
誰にでも納得できる内容であるかどうかをよく考えます。
【注意点】
たとえ話をするときは、テーマにふさわしく、たとえようとしている内容と明瞭に合致している話となっているか、確認しましょう。
かえって誤解を与えるような表現をしないよう注意が必要です。
結勧
法話の結びです。「 合法 ( がっぽう ) 」、つまり法義に合わせて、法味ゆたかに締めくくります。
本説で展開してきた話が、法話のテーマを明らかにしていることをしっかりと確認します。
讃題のご文にもどり、あらためて仏徳を讃嘆して、信心を勧めます。
【ポイント】
本説で用いた例話が、テーマのどの部分にどのように関連しているかを明らかにしましょう。
ともに法に出あわせていただいたよろこび、救いの法の尊さを語りましょう。
この法話を聴聞して、ゆたかな念仏生活につながるように、話を締めくくります。
(5) 注意点
1.法話全体に関して
* 法話は仏徳讃嘆です。讃題を元としたテーマからはずれてはいないかを確認しましょう。
< 次のような点に気をつけましょう。 >
心に響くご法話にしたいものです。
泣き笑いを誘ったり、感動的な話をすることだけに終始せず、阿弥陀仏の慈悲を味わい深く讃嘆するよう、心がけたいものです。
浄土真宗という教えを正しく理解してもらいましょう
聞き手を侮り、教化してやろうという意識ではなく、ともに阿弥陀仏に救われていく「御同朋・御同行」として、阿弥陀仏の救いの法をともに聞き喜んでいけるよう心がけたいものです。
聖典の言葉や専門用語を用いるときは正確な説明をしましょう
単なる説明や解釈だけを述べる話に終始せず、その言葉が言い表そうとしている意図や法義が明らかになるように工夫しましょう。
具体的で共感できる話をしましょう
自分の体験した話は具体的で臨場感がありますが、自らの体験談だけに終始しては、聞く方には他人の話になってしまいます。そこに普遍的な見方を提示して、聞いている方が共感できるように、表現したいものです。
念仏者としてのたしなみをお勧めしましょう
倫理的な話や道徳を押しつけるような話ではなく、阿弥陀仏の救いを聞きよろこぶ念仏者の立場で語りましょう。
ともに凡夫であるという立場で話しましょう
聞く人に不快な思いをさせる、他人の悪口や愚痴は避けましょう。ともに凡夫であり、その凡夫を必ず救うという阿弥陀仏の徳をともに聞き喜べるよう心がけたいものです。
2.「序説」について
時候の挨拶や自己紹介だけではありません。文脈が本説・結勧につながっていく内容であることが大切です。
自信がない場合にみずからのいたらなさを前もって断ることがありますが、仏徳を讃嘆するのですから、謙遜する必要はありません。
3.「例話」について
テーマにふさわしいことが必要です。
たとえようとしている内容と明確に合致していることが大切です。
誤解を与えないように配慮します。
例話の材料は経典に多く説かれていますので、参考になります。
聞き手にわかりやすく親しみやすいように具体的に表現しましょう。
一般的に、誰にでも共感できることも大切です。
書物や人の話から引用するときは、引用であることを明らかにします。
単なる引用にとどまらず、自らが味わい咀嚼して、自らの言葉で語ることが大切です。
4.聖典からの引用に関して
聖典のご文を紹介するときは、必ず聖典を直接確認しましょう。
紹介するご文だけを理解するのではなく、その前後をよく読み、文脈を把握して、自己流の勝手な判断や解釈だけで引用しないように注意しましょう。
紹介するご文が、収められている聖典の解説をしっかり読みましょう。
聖典のご文は正確に紹介しましょう。
5.表現方法
差別語や不快語は用いない。
言葉だけではなく、文脈上において差別的な内容になっていないかを確認しましょう。
不確かな情報、曖昧なことは話さない。